COLUMN 院長コラム

多焦点眼内レンズについて

2月1日から3日まで、横浜市のパシフィコ横浜にて開催された第31回日本眼科手術学会に参加してまいりました。

白内障手術関連では、今回の学会でも多焦点眼内レンズが非常に注目を集めておりました。色々聞いておりますと、既に手術を受けられた方のほとんどがかなりの満足を得ておられるようです。

勿論、現在の白内障手術でもかなりの満足感がありますが、やはり、遠くも近くも見えるというのは、老眼(調節力の低下)で悩んでいた方々にとっては、素晴らしく感動されるようです!

本当に、早く当院の患者さんにも、この感動を得て頂きたいと思います。

しかし、「ほとんど」という所が曲者であります。裏返して言うと、「まれに満足されない患者さんもおられる」という事です…。

多焦点眼内レンズは厚生労働省から認可が出て「日本で使用しても良い」というお墨付きは得ましたが、残念ながら保険適応が認められておりません。すなわち、多焦点眼内レンズを使用して白内障手術を行うと全額自己負担の自費診療という事になるわけです。
※普通の国民皆保険制度で行っている白内障手術扱いとし、この特殊眼内レンズと通常眼内レンズ代金の差額だけを患者様から頂くと、混合診療という事になりますので、現在の医療制度では認められておりません。

「大金を支払ったのに、こんな見え方やったら、手術しない方が良かったわ…。(><)」

となるのは、患者さん、執刀医ともに不幸の極みでございます。

それを防ぐためには、やはり、専門家である執刀医が多焦点眼内レンズの特性を理解し、術前にしっかりと患者さんの目の状態を把握した上で、手術をして喜んで頂けるかどうかを判断しなければなりません。

多焦点眼内レンズに対する当院のスタンスは以下のように致します。

当院の理念「眼科医療(特に眼科手術)を通しての社会貢献。患者様により良好な視機能を提供できるように設備を整え、日々精進します。」に基づき、多焦点眼内レンズによる老眼治療を導入する。
手術前に、院長自身が多焦点眼内レンズの特徴、及び欠点を説明し、しっかりとした理解を得て、納得して頂いた方にのみ施行する。
近視眼の場合は通常コンタクトレンズで視力矯正されていた方にのみ行う。(※眼鏡で矯正されていた方の場合、老眼になっても眼鏡を外せばはっきりとした近方視が可能であり、それ以上の見え方を多焦点眼内レンズで再現するのは難しいため⇒眼鏡をかけるのが苦でなければ、従来の単焦点眼内レンズにて十分満足が得られる)
乱視が強い方の場合は基本的にはお勧めせず、多焦点眼内レンズ挿入術後に、LASIKによる乱視矯正の可能性が高いことを説明し、承諾して頂いた方にのみ施行する。

白内障手術は「見えない状態が見えるようになれば良い」という段階から、ここ数年で、「見えて当たり前、より良い見え方の質を追求する」という段階にステージアップしました。このレンズの登場で、「老化現象(=老眼)を克服する」というアンチエイジング的な段階に突入したと言えます。

一人でも多くの方に、最新技術による見え方を体感し、喜んで頂きたいと切に願っております。その為には、患者様にこのレンズに対する正しい理解を得てもらえるように最大限の努力を払う所存です。