COLUMN 院長コラム

両眼同時白内障手術及び、手術時のご家族入室について

皆様、早いものでもう11月の半ば。秋も深まり今年も残すところ1ヶ月半程度となりました。気温の寒暖差も激しいこの季節、皆様お風邪など召されぬようくれぐれもお体をご自愛くださいませ。

毎年の手術実績をご覧いただければわかりますが、例年この時期は白内障手術のハイシーズンであり、今年もお陰様で多数の手術ご希望患者様にご来院頂いております。外来に手術と超多忙な毎日を送っておりますが、あまり忙しくなると、どうしても1人当たりの患者様とお話しする時間が短くなり、意思の疎通に齟齬が生じかねません。いつも外来が終了すると「バタバタしてちゃんとお話を聞けていなかったかも・・」と反省している今日この頃でございます。もし、聞きたいことや心配ごとがございましたら、遠慮なく僕かスタッフにお尋ねくださいませ!

両眼同時白内障手術について
所で、最近、当院では「両眼同時白内障手術」を施行する頻度が高まっております。通常、白内障手術は片眼のみの手術で、両眼治療する場合は、片眼手術後、1週間前後経ってからもう片眼の治療をするのが相場でございました。

当院の場合、角膜切開による無血手術で、術日の眼帯もございませんので、技術的には前から「両眼同時白内障手術」は施行可能な状態でありました。ただ、これまでは学会等で両眼同時白内障手術については話題が出ておりませんでしたので、当院が先駆けてやることまでは考えておりませんでした。

本年6月の「日本白内障屈折矯正手術学会」に参加した折、両眼同時白内障手術を施行しているクリニックが日本でもボチボチ出てきているのを確認したため、当院も導入を決定した次第でございます。

現在まで7人(14眼)の方に両眼同時手術を施行致しましたが、現時点では全員、術後経過は良好でご満足頂いております。
「それなら、全員、基本的に同時手術をすれば?」との声が聞こえてきそうですが、そういう訳にはまいりません。以下に、同時手術のメリットとデメリットを列挙いたします。

両眼同時白内障手術のメリット
術翌日から両眼で快適な視力が得られる(片眼ずつの場合は、もう片眼が終了するまで、左右差が生じる)
1日で両眼済ませられると通院頻度が減る
医療費が削減できる

などが挙げられます。何といっても、「time is money」ですから、まだお仕事をバリバリされている方は非常に喜ばれます。また、やはり何と言っても手術は怖いと思われる方が多いので、「一回しか手術場に入らなくてよい」ことは患者様のストレスをかなり軽減するようです。
両眼同時白内障手術のデメリット
手術終了直後は両眼ともボヤっとしか見えない
術後の屈折誤差
などが挙げられます。術終了後の見え方は、夜くらいになればだいぶん見えてきますが、はっきりと見えるのは翌朝からとお考えください。これまで施行した方で、中にはお一人で来られ一人で帰られた猛者(?)もおられましたが、その方は当院から徒歩圏内のご近所の方であり、基本的には付添いの方とお越しいただいた方が良いと思います。

術後の屈折誤差に関しては、少々説明が必要です。白内障手術をする際、眼内レンズを挿入しますが、このレンズの度数は術前検査で得たデータを基に、患者様のご希望を聞いて決定いたします。つまり「メガネなしで車を運転したい!」という方は遠くが良く見えるように狙い、「裸眼で本を読みたい。遠くはメガネをかけて良く見えたら良い!」という方は近く(30~50cmくらい)が良く見えるようなレンズ度数を選びます。ただ、このレンズで狙っているピントの位置はあくまでも「予想」でございます。最近は機器の進歩により、95%くらいは満足いくようになっておりますが、逆に言えば5%程度は狙いからズレることもあるわけです。そのような場合、片眼ずつの手術なら、生じたズレを考慮して、もう片眼の眼内レンズ度数を決定できるので、リカバリー可能となります。つまり、片眼が狙い度数でなくても(ズレると言ってもそんなに大きくはズレません)、もう片眼でピシっと狙い通りにいけば、両眼で見たときは全く不自由がないように出来るというわけです。確率は低いですが両眼同時手術では両眼ともズレてしまう場合も考えられるということです。

他にも、「両眼ともに術中術後合併症が出たら?」との懸念は当然ございますが、正直、それは片眼手術でも出てはならない事象でありますので、そうならないように最大限努力するとしか言いようがございません。

というわけで、両眼同時白内障手術が向いておられる方は、一概には言えませんが総論的には、

両眼同時白内障手術が向いておられる方
術前の眼内レンズ度数を決める検査(光学的眼軸長測定)で信頼度が高い方
術後も眼鏡をかけても良いと考えている方(メガネ度数で何とでも出来ます)
1泊入院をご希望の方
日帰りの場合は、手術当日、付添いの方が来られ、お家に帰ってからもある程度お世話をしてくださる方がおられる方

ということになります。

その日の不自由ささえ乗り越えれば、翌日からは快適な見え方となり、通院頻度も別々にやることに比べればかなり減らすことが出来るので、メリットがたくさんあります。ご希望の方は遠慮なく、院長かスタッフにお尋ねくださいませ。

手術時のご家族入室について
さて、もう一つの「手術時のご家族入室について」ですが、先日、とある方が当院で白内障手術を受けることになり、その際、「手術時、主人にも手術室に入ってもらい、手を握ってもらっていても宜しいでしょうか?」とお尋ねになりました。例えばこれまでも、聴覚障害がおありで手話しか通じない方や、日本語の通じない外国の方を手術した際には通訳の方に入って頂いたことはありましたし、小学生のお子さんの手術の際にお母様と一緒に入室して頂くことなどはザラにありますので、「全く問題ないですよ~」とお答えいたしました。手術は問題なく終了したわけですが、その方が非常に喜ばれているのを見ておりますと、「実はもっともっとたくさん、ご家族の方と入室したい患者さんはおられるのではないか??」ということにハタと気づいた訳でございます。

正直言いまして、当院は通常でもガラス越しに手術の状況をご家族の方に公開しておりますので、それが間近で見られていても、僕自身、全く影響はないですし、何よりそれで患者さんが安心して手術を受けられるのであれば、それに越したことはございません。ただ、一族郎党引き連れて手術室の中に・・・となりますと、手術室の清潔度の確保が出来ませんので、それはお断りしますね (^^;)。ご家族お一人の入室なら全く問題ございませんのでご希望の方がおられましたら遠慮なく院長がスタッフに言ってくださいませ!!

今回のコラムは以上でございます。次回は年末か年始(おそらく年始・・)に2012年手術成績の発表をさせて頂きます!