COLUMN 院長コラム

日帰り白内障手術患者様の眼帯なし(術後保護メガネ)帰宅

そろそろ花粉も飛び始め、当院にも花粉症によるアレルギー性結膜炎の患者さんが増えて来てまいりました。皆様は花粉症の対策は万全でしょうか。

この3月に入ってから、当院の白内障手術日の眼帯の有無について変更を行いましたので、このコラムにて報告させて頂きます。

それまでは、一部の症例を除いて手術終了時に抗生剤の眼軟膏を点入し、ガーゼ、およびその上にプラスチックの眼帯をテープで貼り付けて帰宅して頂いておりました。眼帯は術翌日の検査時に外し、保護メガネをかけて頂いておりました。

今回(2月後半からスタートさせておりましたが)、日帰り患者さんが手術を終えて帰宅される際、基本的には眼帯をせずに保護メガネで帰宅して頂くことに致しました。保護メガネ帰宅の患者様は、帰宅されてから就眠までに、2時間毎に抗生剤点眼をして頂きます。

利点は、

術直後からの抗生剤点眼を開始できることにより、術後感染症の可能性を減ずることが出来る。
一度、コラムでも触れました通り、手術直後から抗生剤点眼を開始することにより、万一、術中に細菌が眼内に侵入していたとしても、増殖する前に叩くことが出来ると考えられます。

手術日の夕方以降から、ある程度の視力が回復しており、片眼眼帯下における不自由さを軽くすることが出来る。
片眼を眼帯した状態は、一度経験してみると、思ったより不自由であることがわかります。立体感がなくなり、転倒などの危険性も高まります。眼帯をせずに保護メガネで帰宅することによって、人によっては手術直後から、遅くとも夕方以降にはある程度両眼で見える状態になります。

眼帯なしで帰ることにより、患者様が不安に思われる事は以下の点です。

手術直後に眼帯をしないと、感染症に罹るリスクが高まるのでは?
勿論、手術時に創口からの漏れがないかをしっかりと確認してから終了しております(この際、どうしても創のしっかりとした閉鎖が得られない場合は創口を縫合します)。保護メガネ帰宅の方は、帰宅前に、必ず眼圧測定を行ったあと、院長が診察をして、確実な創の閉鎖を確認してから帰って頂きます。創がしっかりと閉じていれば、眼軟膏を入れて眼帯するよりも、抗生剤の点眼を当日から開始する方が、むしろ感染症に有利なのは前述した通りです。

手術した日から点眼を開始するのは、もし眼球を押してしまって創口が開いてしまったらと思うと不安だ…。
この点は、非常に重要です。当院では、術前及び、術後にしっかりと点眼指導を行います。自信のない方や認知症等で自己点眼が困難な方に無理にお勧めする事はございません。ただ、翌日からは自己点眼が開始されますし、眼球を押してしまうといけないのは術当日に限らない事です。通常の症例であれば、まず問題ございません。点眼に不安のある方は、点眼補助具を使用してもらう体制も整えております。

今までも、当院に入院して頂いた患者様には、手術日術後2時間毎の抗生剤点眼は行っておりました。その際、夜に私が、

「このまま保護メガネのままでいましょうか?それとも眼帯しましょうか?」
と伺いに行くと、半分以上の方は、
「時間が経つにつれて、見やすくなって来た!もうこのままで良いです!」
と仰られます。

「不安だし、眼帯をして下さい。」と仰られる方もおられますが、前に手術した際に手術日に眼帯をされており、今回当院で手術をした際に保護メガネで帰宅された方は、皆さん、
「凄く楽で、助かった!」
とこちらが想像していた以上に喜んでおられましたので、積極的に勧めることを決心いたしました。更に言えば、昔から片目が失明状態の方の優位眼の白内障手術の場合は、手術当日から眼帯なしでいることは、珍しいことではなかったということも付け加えておきます。

今までのやり方(抗生剤眼軟膏+眼帯による帰宅)でも、事故や術後感染症が生じた訳ではないので、不安な方はご遠慮なく仰って下さい。決して無理強いすることはございません。

また、点眼麻酔のみで手術を行わなかった症例や、術直後の創閉鎖が不安定な症例などは、眼帯をして帰って頂きます。

当院は、現状に甘んじることなく、常に医学的にも患者さんの為にも良い方法を取り入れながら、時代と共に進化していきたいと心に銘じております。